不汗党がマジで良かったって話

↓ネタバレどころかラストまでがっつり触れてるので気をつけてください。

Twitter韓国映画「不汗党」が良いっておっしゃる方が沢山いて、観なきゃ観なきゃと思っていてやっと観に行けた。
日本では名もなき野良犬の輪舞というらしい。チケット買う時にこれが言えなくて、題名もわからない映画を見る変な人になってしまった。日本でも不汗党で良かったんじゃないんですかね?


題名の話はどうでもよくて、主演はソル・ギョング、イム・シワンの二人。
ギョングさんの方は見たことがない方だなーなんて思ってたけどとんでもない。
こちらも衝撃作「殺人者の記憶法」の主演俳優だった。観てる途中では気がつかなくて終わった後に急に思い出した。マジで別人。普通に「殺人者〜」は最近見たのに、60代の方だと思ってたからアクションをバッチリこなせる年齢だったなんて考えもしなくて「殺人者〜」のアクションも全部スタントだと思ってました。申し訳ない。振り幅が化け物。怖すぎる。

シワンくんは、ずっとZE:Aで(このグループって一応解散してないですよね?あれだけ個人が売れてるのに一位取れないのが不思議だった)活躍してるのを見ていて、彼のドラマデビュー作も大好きな作品だったので本当に楽しみにしていた。今回よく聞いた感想の中に、「シワンくんなしではこの映画は語れない」といった類のものが多かったので期待しかなかった。
けど、本当に期待以上。なんとなくナヨナヨしたイメージが強かったのに綺麗な顔したマッチョになってた。あと目の演技がとにかく上手で、目がくすんで冷め切っていく様がとにかく最高だった。

私は韓国映画で特に男性がバディを組むような作品って、日本映画にも海外映画にも感じない特殊さがあると思っている。ただの「友情」「家族愛」で済ませられない「愛情」というか信頼からしか生まれない情の深さを描くのが本当に上手だと感じることが多いが、今回の作品ではそれが顕著に表現されていた気がする。
この映画ファンの方で彼らが愛し合っていたと形容することが多いのが納得できてしまうほど、主演の2人の間には家族よりも友情よりも深い愛を感じた。

例えば、シワン演じるヒョンスがピンチの時に「チャギヤー。お待たせー」と颯爽と登場するギョング演じるジェホ。

ヤバくない??? 控えめに言って、チャギヤーって何。すごいパワーワード。この瞬間めっちゃ頬が緩んだ。
花火ではしゃいだり、1つの牢屋で過ごしたりとにかく恋人という言葉が似合うほど一緒に行動する。
そんな2人が薬の密売人と刑事でお互い騙し合う立場なのに、あるキッカケでどんどん惹かれあってバディを組んで裏社会で暴れまくる映画前半は本当に見ていて胸が熱くなったし、ずっとこのシーンが続けば良いのにと願ってしまった。
あるキッカケというのはヒョンスの最愛の母の事故死なんだけど、実はそれを仕組んだのはジェホで、ヒョンスは母の亡き後この世で一番信頼していた父親のようで友人のようで旦那?のようなジェホに騙されてたことを知ってしまう。
ここからが映画の後半戦みたいなものであり、この映画の醍醐味なのかなと観ていて感じた。人をずっと信頼できずにいたジェホを無条件で信じると言ってくれたヒョンスが、真実を知ってジェホにとった行動には涙が止まらなかった。
なんとなくだけど、ジェホもヒョンスも互いに相手が自分を殺してくれることを願っていたような気がした。心の奥から信頼してしまっている人を恨み、恨まれ、裏切り、裏切られなきゃいけないのならばいっそ殺してほしい。それが野良犬たちの究極の愛の形なのかなと、死ぬことでお互いの信頼を見せようとしているのかなとすら感じた。

結局ヒョンスが生き残り、実の上司もジェホも殺した。
でも実の上司にあたる主任に対しては、なんの躊躇もなく銃で弾が切れるまで打ちつづけて殺したのに、母と同じく車で轢かれたジェホに対しては、彼の命を最後まで肌で感じるように殺した。ここに結構グッときてしまって、冷静に見ると、あとで現場に自分がいたという痕跡を残さないために手で窒息死させたと考えられるけど、私はこのシーンで映画の冒頭でコ会長の甥が言っていた話を思い出した。
「人間が罪悪感を持たずに人を殺せるようになった。それは道具が変わったからだ」
こんな話だったと思う。彼は、石で殺していた時代よりも銃で殺す現代社会の方が罪の意識が薄くなると言っていた。
ヒョンスはジェホに対して銃を使わずに一番原始的な手を使った殺し方を選んだ。
もしかしたらヒョンスの彼に対する思いが彼の生きていた証拠を感じるためにあえてそうさせたのかもしれない。

ジェホはヒョンスに殺される直前に「俺と同じ失敗をするな」と言った。
これは人を信じるなということだろうか。
ヒョンスはその助言に対して頷いた。そしてその決意をジェホを殺すという行動で彼に示したように感じた。
ヒョンスは間違いなくジェホの後を継ぐだろう。人を信じず、状況だけを信頼する男として孤独と戦うのだ。愛情を知ってしまっている人間がそれをなくして生きるのはどれほど残酷なことだろう。ひとりぼっちになった最後のヒョンスの涙がとても辛かった。


とにかく幸せなヒョンスとジェホを目に焼き付けたい。言葉がわからなくてもいいから今すぐ韓国のインタビューとか見たい。2人が笑顔で共にいられない世界なんて意味がない。。
と鑑賞直後から久々にオタクの血が騒いだ良き映画だった。ぜひ全てのオタクに見てほしい。残酷描写は多々あるけど、オタクの大体は見たあと天を仰ぎます。マジで。上映規模が小さすぎて詰んでるけどみんな見て。